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相続税対策について

平成15年度税制改正の行方

生前贈与新時代

 みなさんは、どんなに多くの財産を持っていても、まったく相続税を課税されずに済む方法をご存知でしょうか。まるで、なぞなぞのようですが、とても簡単なことです。生きているうちに、全財産を家族に贈与してしまえばよいのです。この方法を使えば、相続税は課税されません。その代わり、相続税よりもはるかに高い贈与税が課税されることになるのですが。

例えば、相続人が子供1人のケースで財産が1億円の場合、相続税は600万円で済みますが、子供に1年間で1億円の贈与をした場合、贈与税が4千720万円になります。こんなに贈与税を払うのはいやなので、全財産を家族に贈与する人はいないのです。つまり、相続税が課税されるというわけです。

 そこで、1人に1年間で110万円までの贈与は、贈与税が課税されないことを利用して、子供に毎年110万円ずつ贈与する方法もあります。しかし、これでは全財産を贈与するのに、91年もかかってしまいます。

 なんとか安い贈与税で、財産を家族に贈与する方法はないものだろうか。それが、今年度の税制改正で創設された「相続時精算課税制度」です。この新制度で、子供に1年間で1億円の贈与をした場合、贈与税は1千500万円になります。

 さらに、相続開始時には本来の相続税600万円との差額900万円が、税務署から還付されることになっています。つまり、これまでのように贈与税が高くなることを恐れて、生前贈与を思い止まる必要がなくなったということです。これからは、自分の死亡後、家族に財産を分割してもらうのではなく、自分が生きているうちに、自分で財産を分割する時代「生前贈与新時代」が到来したことになります。

新制度の損得勘定

それでは、新制度の生前贈与は本当に得なのでしょうか。これには、少し疑問が残ります。従来の制度では、原則として生前贈与した財産は、相続開始時に相続税が課税されることはありませんでした。つまり、毎年110万円ずつの贈与は、贈与税も相続税もかからないことになります。

  しかし、新制度では、生前贈与した財産にも相続開始時に相続税を課税して、贈与税との差額を追加で納付したり、税務署から還付されたりすることになります。また、新制度で生前贈与した財産に相続税を課税するときは、相続開始時の価格ではなく生前贈与時の価格です。生前贈与時に1億円だった財産が、相続開始時に2億円に上昇していても5千万円に下落していても、いずれも1億円で課税することになります。

 得をするか損をするかは、生前贈与した財産の価格が、上昇するか下落するかにかかっているわけです。まるで、ギャンブルのような制度ともいえるでしょう。さらに、新制度は従来の制度との選択なのですが、一度新制度を選択すると、二度と従来の制度に戻ることはできません。それでは、新制度の利用価値はまったくないのでしょうか。

 例えば、大規模な優良賃貸マンションなどの収益物件を、新制度で子供に贈与すれば、贈与後に発生する家賃などの収益を子供に移転させることができます。本来ならば収益が親の財産となって相続税が課税されるものが、子供に収益を移転することにより相続税の納税資金となるわけです。いずれにしても、新制度の選択には慎重な対応が望まれます。

その他の改正事項

  それでは、夫婦二人の老後資金はどの程度かかるのでしょうか。

 ある調査によりますと、ゆとりのある老後生活をおくるには最低でも月額38万円は必要だといわれています。つまり年間で最低456万円、65歳から85歳までの20年間を自分の貯蓄で生活すると仮定すると、実に1億円近い貯蓄が必要になるのです。

 土地で1億円の財産を持っている人はたくさんいますが、現金や預貯金で1億円の財産を持っている人はほとんどいません。あなた自身や奥様の老後対策を含めた相続対策の大切さが分かっていただけると思います。

 例えば土地ばかりが財産の場合、その土地の収益性をいかに高めるか、お金のかかる土地ではなくお金を生み出す土地にしていかなければなりません。

 今までは土地という財産を守るため、なるべく多くの借金をしてマンションなどを建築し、相続税を減額する手法がとられてきました。しかし相続税は安くなっても多額の借金を返済する必要があるため、収益性は低いものとなります。

 これからは土地という財産を運用している経営者の視点が必要です。相続税はあまり安くならなくても借金はなるべく少なくし、優良な建物を建築して入居率を高める。また、収益性の期待できない形の悪い土地などは、思い切って処分してしまう。

 相続税が安くならなくても、それを上回る高い収益性を確保し、あなた自身や奥様の老後資金に充てる。

 ご家族よりもあなた自身を中心に据えた、そんな幸せな相続対策が今、求められています。 相続時精算課税制度のかげに隠れてはいますが、本当はもっと大きな改正があります。それは生命保険の評価方法の改正です。例えば、6千万円の預金があるとします。このままでは6千万円に相続税が課税されます。

 そこで、相続開始時には保険金が支払われない一定の終身保険に加入したとします。すると、相続税が課税されるのは、6千万円ではなく4千万円になるのです。そして、相続開始後その保険を解約すれば6千万円に配当金が上乗せされて帰ってくるというものです。

 保険を活用した相続税の節税プランとして、多くの資産家のかたが行っているものです。しかし、3年後には4千万円ではなく、6千万円に配当金相当を上乗せして相続税を課税することになる予定です。これでは、預金と変わらなくなるわけです。

 そして、この改正は現在すでに契約が成立している保険にも適用されることになっています。死亡保障という本来の目的で、保険に加入している人にとっては何でもないことなのですが、相続税の節税のみを目的として、保険に加入している人にとっては大変迷惑な改正となるでしょう。やはり保険は、節税のために加入するものではなく、死亡などのリスクに備えるために加入するものだということです。

 将来の税制改正にも、動じることのない、王道を行く相続対策を心がけたいものです。

筆者プロフィール

笠井良一(笠井良一税理士事務所所長)

年齢:55歳/出身地:山梨県/趣味:音楽鑑賞

笠井良一税理士事務所

住所:福岡市中央区天神2-8-49 福岡富士ビル7階

TEL:092-771-4421

笠井良一

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