もめないための三つの呪文
相続をめぐる最大のトラブルは遺産分割で兄弟がもめることです。
早い話が「兄貴だけが取りすぎだ」、「おまえは親の面倒もみずに」という兄弟げんかです。もっとも幼い頃からお菓子の取り合いをしていた仲ですから、いまさら仕方ないのかもしれません。
しかし、今まで仲の良かった兄弟が親の相続をめぐって二度と口をきかなくなるのも悲しいものです。借金をして「相続税が下がった、下がった」と喜ぶのが相続対策ではありません。生きているうちに、「いかにスムーズな相続を迎えるか」というシナリオを作ることが本当の相続対策です。そこで今回は、相続争いを未然に防ぐための三つの呪文をお教えしましょう。
一つ目の呪文「遺言」
遺産分割は相続人間の話し合いで決まります。財産がすべて現金であれば、みんなで均等に分割して終わるのかもしれません。しかし現実は、賃貸マンションや自分が経営している会社の株といった換金価値の劣る財産ばかりです。
「賃貸マンションは不動産投資に熱心なあの子に」、「自社株は後継者であり会社の役員をしているあの子に」と思っても、その通りになるという保証はどこにもありません。また、相続人間の立場の違いも考慮しなければなりません。自分の介護を親身になって行ってくれた人や、兄弟中での経済的弱者には多くの財産を与えたいものです。
しかし現実は「お姉ちゃんは財産がほしいから看病していたのでしょ」、「兄貴は努力が足りないからいつもお金がないのよ」となることもあります。また妻を亡くした後、同居している籍を入れていない女性に財産を与えようと思っても、この女性には相続権すらないのです。
さらに、「先妻の子」、「愛人の子」、「高齢者の再婚」、「言うことを聞かないドラ息子」、兄弟げんかの種はつきません。
そこで、これらの問題で悩んでいる方は次の呪文を大きな声で唱えてください。
きっと立ち所に悩みが解決することでしょう。
一つ目の呪文「遺言」。
二つ目の呪文「生前贈与」
一つ目の呪文「遺言」で、きっと思い通りの遺産分割が可能になったことでしょう。
ただ、一つ言い忘れていたことがあります。
「遺言」の呪文は、あなたが死ななければ効果が現れません。
あなた自身が本当に効果があったかどうかを、確認することはできないのです。
とくに「自筆証書遺言」という呪文は効き目がないこともあります。
効き目の強い「公正証書遺言」という呪文でも、兄弟げんかそのものをなくすことはできません。こんなときは、あなたが子供たちの間に入って兄弟げんかの仲裁をすべきところですが、あなたはもうこの世にはいないのです。
また、知恵を絞り子供たちのことを考えて、どんなにすばらしい遺産分割を実現したとしても、あなたが子供たちの喜ぶ顔を見ることはできません。
さらに「公正証書遺言」という呪文を唱えたことが明らかになると、その日から子供や子供の嫁が自宅に足しげく通いだし、兄弟同士牽制し合って疑心暗鬼になってしまいます。
何とか自分の目の黒いうちに、自分自身で子供たちに十分な説明ができるうちに、遺産分割を済ませる方法はないものでしょうか。
そこで、これらの問題で悩んでいる方は次の呪文を大きな声で唱えてください。
きっと立ち所に悩みが解決することでしょう。
二つ目の呪文「生前贈与」。
三つ目の呪文「遺留分の放棄」
一つ目の呪文「遺言」と二つ目の呪文「生前贈与」で、今度こそ思い通りの遺産分割が可能になったことでしょう。ただ、もう一つ言い忘れていたことがありました。
「全財産を長男に相続させる」という「遺言」の呪文や「全財産を次男に贈与する」という「生前贈与」の呪文は効き目がないことがあります。
正確には一旦は効き目があるのですが、あなたが死んだ後で財産を少なめにしかもらっていない相続人たちが、多めにもらった相続人に財産を返せという請求(遺留分減殺請求)ができます。
今後は法廷闘争ですので兄弟げんかは泥沼になってしまいます。言うことを聞かないドラ息子に「遺言」の呪文で財産を与えないことにしても、「生前贈与」の呪文でドラ息子以外に全財産を与えたとしても効き目があるとは限らないのです。
そこで、これらの問題で悩んでいる方は次の呪文を大きな声で唱えてください。
きっと立ち所に悩みが解決することでしょう。
三つ目の呪文「遺留分の放棄」。
ただし、この呪文を唱えることができるのは相続人(ドラ息子)だけです。あなたが唱えることはできません。「生前贈与」の呪文で、いくらかの財産を相続人(ドラ息子)に与えて、相続人(ドラ息子)に「遺留分の放棄」の呪文を唱えさせ、最後に相続人(ドラ息子)に財産を与えないという「遺言」の呪文でとどめを刺す。ドラ息子は三段攻撃で退治できます。