平成17年分の路線価は全国的に下落率が縮小傾向となりました。バブル崩壊後の急激な下落が落ち着いて、明るい兆しがみえ始めてきました。こうしたなか、今後値上りしそうな土地を所有する資産家たちの間では、今後の地価の上昇を鑑み、相続時精算課税を利用した生前贈与を視野に入れた相続対策が検討されています。
一方で、いまだ下落し続ける地域もまだまだ少なくありません。下落率次第で、土地の評価は大きく変わり、相続税額にも影響が及びます。こうしたときには時価申告が有効となり、地価下落への対策を練ることができます。
国税庁から8月1日に公表された平成17年分路線価では、全国的に下落率が縮小傾向となりました。再開発や交通整備などの影響から、昨年より路線価が上昇した地点が増加しました。都心部などでは、数年前から変動率が下落から上昇に切り替わる地点が増えるなど、本格的な地価回復の様子が伺えます。
相続においても、土地の評価は重要となります。評価次第で、相続税額が大きく変わるからです。路線価の動きによって、相続財産の評価額が数千万円も変わるとなれば、その動向に目が離せないのは当然となります。路線価が横ばいまたは、上昇した地域の土地を相続する資産家にとって、路線価の上昇は相続税額のアップに直結するため、諸手を挙げて喜べないのは確かです。
しかし、なかにはこれをうまく利用して相続対策をしようと、今後の地価の値上がりを見越して生前贈与に踏み切る資産家もいます。
こうした資産家にとって、利用価値があるといわれるのが相続時精算課税制度。相続時精算課税制度は、65歳以上の親から20歳以上の子に贈与した場合に、 2500万円までの贈与財産については贈与税が免除されるというものです。
2500万円を超える部分については贈与税が課税されるが、その税率は一律 20%となっています。また、相続時精算課税制度を適用して贈与する財産は、種類、金額、回数ともに問われません。
ただし、相続時精算課税制度を適用して生前贈与した財産は、相続が発生したときに、相続財産に繰り戻して相続税額を計算しなければなりません。そのため、一部では相続対策に使えないとの声もあります。
しかし、今後値上がりが見込める財産については、相続時精算課税制度を使った生前贈与が有効となります。生前に贈与を受けた財産は死亡当時の時価で評価をしますが、相続が発生した場合にも、贈与時の時価のままで評価することができます。
今後値上がりの見込める土地について、相続時精算課税制度を適用して贈与すれば、相続が発生したときに坪単価がかなりの高値になっていたとしても、相続財産には贈与を受けたときの時価のままで加算できます。
つまり、地価の上昇分の相続税が課税されないで済むわけとなります。地価の上昇がみられる地域の資産家は、相続時精算課税制度を適用して土地を贈与するか、相続させるか、路線価の動向と資産規模を考えて、どちらがトクになるかに頭をひねらせています。
一方で、バブル崩壊後から下落の一途をたどり、いまだ下落率が20%以上という地域もあります。平成17年分の都道府県庁所在都市における路線価をみても、秋田市では24・3%、甲府市においては25%の下落率であります。
こうした下落の著しい地域の土地を相続する場合、相続時精算課税制度適用は逆効果です。しかし、その代わりに使えるのが「時価申告」となります。
相続税法第22条では、土地などの財産評価は、「相続開始時の時価」と規定されています。路線価は、1年間の地価変動を反映させ、より時価に近いものではありますが、土地の形状や状態は千差万別です。時価が著しく下落している地域では、下落分をしっかり反映させて時価申告することは、納税者の権利でもあります。
バブル崩壊し、各地で地価が急激に下落した平成4年には、税務当局でも「必ずしも時価にこだわらない」というスタンスを事務連絡で示していました。また、その当時の税理士は、簡便法によって土地を時価で評価することを勧めていましたが、現在ではこの方法を使って得をすることはほとんどなくなりました。
しかし、現在は不動産鑑定士に依頼して不動産鑑定評価を出し、その評価によって時価申告をするようになりました。これは、不動産鑑定評価は諸々の事情を加味しているため、土地の下落や形状の問題解決に効果的な手法であるからです。
ただし、税務当局は「時価申告のあった場合は、実際に申告された土地へ職員を派遣し、実態調査を行うようにしている」と、慎重な構えをみせています。







