こんな方は遺言が無いと危ない!パート1
2010年5月12日
遺された家族に争いなく財産を分けてもらうためには、遺言書の準備が不可欠の時代になっているということは、以前お伝えした通りです。従って、相続人が複数名いる方には例外なく遺言書の作成をお勧めしたいのですが、その中でも特に遺言が必要だと思われる代表的なケースを、今後折に触れてご紹介していきたいと思います。
第1回目の今回は、≪賃貸不動産をお持ちの方≫のケースです。
≪賃貸不動産をお持ちの方≫
親から古い賃貸不動産を相続して困っている子供は結構多いものです。収益が低い割に修繕費等がかさみますし、またオーナーとして一定の物件管理をしていく労力がかかるからです。遠方に住んでいたり、別に本業を抱えていたりしていれば、尚更大変です。
かといって、売却したいと思っても、そもそも収益の低い物件はなかなかそのままでは買い手がつきません。
結局、入居者を立ち退かせた上で建物を壊して更地にして売る必要に迫られます。しかし、入居者を立ち退かせるのも至難の業で、時間とお金がかかります。更に、建物の取り壊し費用も必要です。
それだけ苦労して売却準備を進めても思うように売れないということも考えられ、踏んだり蹴ったりという事態にもなりかねません。
では、収益が高い物件であれば問題がないのかというと、そうともいえません。何故なら、そんな物件であれば相続人全員が欲しがるからです。
仮に、収益力のある賃貸マンションと収益力の無い賃貸マンション(又は収益を生まない亡親のマイホーム)が遺産としてあった場合、どちらが欲しいかと尋ねれば皆が同じ答えを出すでしょう。誰がどの不動産を相続するかで話し合いが難航することは、容易に想像できます。
また、賃貸不動産がある場合、遺産分けでもめると別の問題も発生してきます。それは、相続発生後の毎月の賃料の取扱いについてです。
賃貸不動産そのものは被相続人が亡くなった時点で保有していた財産ですから遺産分割の対象であることは当然ですが、そこから発生してくる毎月の賃料は違います。これはあくまでも亡くなった後から発生した財産ですから、相続財産ではありません。この点、最高裁でも、「相続発生後、遺産分割が確定するまでの間に発生した賃料収入は、遺産である賃貸不動産とは別の財産であり、各相続人が法定相続分に応じて取得すべきである(最判平成17年9月8日)」という判断を下しています。
遺産分けの話し合いが難航すると、「いっそ共有にしてしまおうか」という話が出てきがちですが、それもまた問題です。不動産の共有は、単に問題を先送りするに過ぎません。
共有となった不動産では、自分の持分のみを売却することが実質的にできません。法的には可能ですが、現実には一部の持分のみを買ってくれる人はまずいないといっていいでしょう。
唯一現実的に可能なのは他の共有者に買ってもらうケースですが、購入資金の問題もありますから、話は簡単にはまとまりません。
また、自分の持分を担保に入れて金融機関からお金を借りることも、実質的に不可能に近いでしょう。売却するにしろ、担保に入れてお金を借りるにしろ、共有者全員の合意によりその不動産全体を差し出さない限り、現実的にはほぼ無理なのです。
更に、相続税の納税のために自分の持分のみを物納することもできません。共有不動産の物納は、共有者全員が物納する場合にしかできないと決められているからです。そして、これが賃貸不動産だった場合は、賃料の改定や契約解除、集金方法などに関する事項については、共有者の持分の過半の同意が必要になります。
更に、時間の経過と共に共有者自身にも相続が発生しますので、その相続人である配偶者や子供達が新たな共有者として加わってくることになります。まったく血のつながりのない人達がいつの間にか共有者となっていることさえあります。数十年の時を経て、共有者の数は増える一方で、お互いの関係性はだんだん希薄になっていきます。こうなると、共有者全員の意見の調整も非常に難しくなるでしょう。全員の合意がとれなければ、その不動産を売却することもできなくなりますし、過半の合意がとれなければ賃貸業の継続もままなりません。
不動産は、極力単独所有とするべきです。そして、それを遺言という形でしっかりと遺すことが必要です。
例えば、公正証書遺言で賃貸不動産を誰に相続させるかの指定をしておけば、極端な話、親が亡くなった次の日に指定された相続人が単独で名義変更することも可能になります。そうすれば、賃料も最初からこの相続人が単独で受取ることができ、アパートローンの返済に充てたりするなど自由に使うことができるのです。
なお、賃貸不動産を相続させる場合には、敷金等(の預貯金)もあわせて引継がせることを忘れないようにしなければなりません。賃貸事業を引継ぐ方は、当然、入居者に対する敷金等の返還義務も承継することになるからです。
遺言無しに賃貸不動産を残せば、あなたが永年頑張って発展させてきた賃貸事業そのものが立ち行かなくなる可能性があります。誰にどの不動産を相続させるのか、遺言でしっかりと指定しておくべきでしょう。











