コラム Column
今回は、事業用物件をお持ちのオーナーに向けて解説します。
借主が手厚く保護されるのは、事業用より居住用
事業用であれ居住用であれ、オーナーである貸主と借主の間で結ばれる契約は「建物賃貸借契約」で、借主が「借地借家法」で守られているということは共通しています。
では何が異なるかというと、「借主が保護されている範囲が違う」と言えます。事業用の場合は「ビジネスのため」、居住用の場合は「生活のために不可欠なもの」とみなされ、居住用で借りる場合の方が借主はより手厚く保護されます。
これは、事業用における賃貸借契約の場合、借主は「消費者」ではなく「商人」としてみなされるため、消費者を守る法律の保護を受けず、賃貸借契約によってのみ規定されるからです。
実際に、どんな点で2つの契約の内容が異なるのかは、後述します。
事業用建物賃貸借契約は、どんな業種に当てはまるの?
一口に事業用と言っても、その業種はさまざま。所有している物件によってどんな事業者が入居する可能性があるのか、イメージしておくことも必要です。
店舗用物件の場合→飲食店、美容室、物販店、病院など
オフィス用物件の場合→企業の事務所、塾など
倉庫用物件の場合→常温・冷凍・冷蔵、物流、事務所付きなど
工場用物件の場合→食品加工工場、自動車修理工場など
ロードサイド物件の場合→ガソリンスタンド、飲食店、ホームセンターなど
土地の場合→面積、接道、用途地域などによってさまざま
どの業種が入居する場合も、事業用であれば事業用の賃貸借契約が必要になります。
事業用と居住用で、賃貸借契約の内容はどう異なるの?
所有する物件を事業用として貸し出す場合、貸主として「事業用賃貸借契約」を結びます。居住用の契約と比べて異なる点が多くありますので、契約内容の特に重要なところをしっかり把握しておきましょう。
(今回は比較の為、建物賃貸に限定して説明します)
(1)賃料
事業用の場合は、消費税がかかります。
居住用の場合は、非課税です。
(2)契約形態と期間
大きく「普通借家契約」「定期借家契約」の2種類があり、こちらは事業用、居住用ともに変わりません。
普通借家契約の場合は、借主からの解約の申し出や、双方での合意、建物老朽化などの正当な理由がない限りは更新されます。
定期借家契約の場合は、契約期間満了時に契約が終了となります。ただし貸主は借主に対して、契約満了の1年前から半年前までに知らせることが必要です。
(3)解約予告
事業用の場合、6ヶ月前や3ヶ月前に退去することを伝えなければならないケースが多くあります。
居住用の場合、一般的に1ヶ月前とされています。
(4)原状回復
事業用の場合、経年劣化が認められることもありますが、契約書に原状回復に関する特約がある場合は、その特約の内容通りに回復させる必要があります。一般的には原状回復に関する費用は借主が100%負担するケースが多くあります。
居住用の場合、経年劣化が認められます。
事業用賃貸借契約でのトラブルって?
事業用賃貸借契約の場合、退去時の原状回復において最も多くトラブルが発生しがちです。
事業用賃貸物件は、居住用に比べて、日常的に人や荷物の出入りが激しく、物件が損傷するリスクが高いため、貸主側が借主に原状回復を負担する範囲を特約として契約書に明記しておくことが多くあります。
事業のために大きく内装を変更している時には、原状回復に多額の費用がかかることもあります。
ちなみに弊社では、契約書に契約前の状態を写真に残し契約書に添付し、『原状』を定義します。
また、引渡し時の現状と原状回復の内容が一致せず写真が添付できない場合は、原状回復特約に床・壁・天井・設備等々の仕上げを細かに記載することで、これらのトラブルを未然に防ぐ手段を講じています。
その他にも、本体の目的と異なる使用や、騒音などによる近隣トラブルも起こりえます。これらのリスクを見越した上で、契約の内容が適切なものになっているかを検討する必要があります。
まとめ
ここまで見てきた通り、居住用の契約とは異なり、事業用の契約はビジネスを行う者同士による取引です。契約条件をしっかり設定することで、自分に不利な状況を防ぐ場合があります。
そのために、高い専門知識を持ち事業用取引事例の多い不動産会社に相談することをおすすめします。